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医療用の木製車椅子を試作
ドイツの医療機器展示会MEDICAに出展 守谷建具店(埼玉県)

建具や家具といった住宅や建築物のインテリアを製造している木工業においても、今後は高齢化社会に向けて福祉分野への進出が求められている。
守谷建具店(埼玉県所沢市)では、このたび、ヒノキ製の合板を用いた医療用の車椅子の試作に成功。報道機関に公開された。
この車椅子の車輪と基材は、12mmのヒノキ合板を3枚に重ねて真っ平に研磨して34mmの厚みに加工している。重量は約20キロほど。150キロの重さにまで耐えられるように設計されている。手すり部分にブレーキがついている。また業界で”パッチン”と呼ばれている収納箱などに用いられている金具を用いて半分に折りたたむことができる。

[医療機器向けに試作]
この車椅子の用途は、医療機器用である。強い磁性を用いて特殊な検査を行う医療機器(MRIなど)を導入している病院施設では、機器の故障を避けるために磁性を持っ金属を検査室に近づけることを禁じている。患者には身につけている金属を全て外してもらった上で検査している。ただし、車椅子を使用している被験者の場合、車椅子の金属が機器の磁性に反応するので、これまで検査室では車椅子を使用することができなかった。そのため医療機器内部の高性能な磁力が反応しない車椅子が求められていた。
こうした特殊な用途のため、製造時には全ての金具で磁性の数値検査を行い、問題がないことを確認してから出荷する。また、車軸は金属性のべアリングの代わりに樹脂性の軸を3Dで設計。耐久性を高めるために、ホイール部分だけが回転して軸が磨耗しないように設計した。

[世界中の医療現場が注目]
この車椅子は11月にドイツで開催される医療関連機器の世界最大規模の展示会MEDICAで参考展示を行う。また木材加工の新しい可能性を示す製品として、11月11日~14日にかけて開催された日本木工機械展において参考出展される
ドイツでの展示に備えて、特に入念にチェックが行われたのは耐久性である。西欧人、特に北欧の場合、骨太で背丈の高い体型が多く、体重が100キロを超える人は珍しくない。車椅子における座席部分を100キロ超の耐荷重とすることは技術的に難しいことではないが、問題は車椅子の前部下についている足置きの箇所の耐久性である。このペダル大の大きさの部材に体重をかけて乗り降りするたびに100キロ超の荷重かかるので、ここの部分を磁性を持たない木材で仕上げることは難しい。そこで、耐久性の高い木材と強い磁力でも反応しない特殊ステンレスの金物を組み合わせて、試作品の実験を繰り返して耐久性に優れた型を作り出した。
木材加工に関しては、ヒノキ合板の小口加工のために新しい刃を新調した。一般的な平刃のスパイラルでは刃が小口に通らないので、斜めにギザギザがついていて小口加工に適したスパイラルを採用している。
こうした医療機器を病院に卸している商社によると、磁性を持たない木製の車椅子は3年ほどかけて試作が行われてきた。今回の共同試作において全てのパーツで耐久性・品質性・安全性・生産性における課題をクリアしたことで、医療用機器としての水準を満たす目処が立ったという。守谷建具店では、木工産業の新規需要の拡大を目指して、今後は一般的に用いられる木製車椅子の試作を考えている。





『月刊住宅ジャーナル』2015年12月号、 株式会社エルエルアイ出版 より一部改変のうえ転載(原文はPDF参照のこと

木製車椅子の詳細な写真はこちら


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