木づかいのコツ 無垢材の乾燥と加工1 – 『月刊住宅ジャーナル』2020年10月号掲載

守谷インテリア木工所が月刊住宅ジャーナル(株式会社エルエルアイ出版) 2020年10月号で紹介されました。以下に転載します。
全文はこちら( monthlyhousingjournal_2010d1.pdf )。

連載 直伝 木づかいのコツ 無垢材の乾燥と加工1

第18回(全20回予定)
守谷建具(埼玉県)代表 守谷和夫

[ 月間住宅ジャーナル ]
本連載、そろそろ終盤に差し掛かってきました。業者さんにぜひ伝えておきたいテーマはありますか?

[ 守谷 ]
やはり、無垢材の乾燥とか加工のコツだろうな。こういう話は、自分も大工さんに教えたりすると、すごく喜ばれるよ。それに無垢材を扱うのが苦手が木工屋にも参考になるんじゃないかな。
今、養生している無垢の一枚板のテーブルには、まったく新しい乾燥方法を取り入れているんだ。裏面を見てくれ。

[ 月間住宅ジャーナル ]
テーブル板の裏に70個以上の孔があいています。

[ 守谷 ]
これは乾燥のためなんだ。材寸は、巾1100mm、長さ2000mm、厚さ65mm、秋田産の無地と節つきの2枚セットで仕入れたテーブル板に使う杉だ。孔をあけたのが木裏で、四隅に脚をつけて使う。脚には床の間などに使う北山杉の規格外品(遺伝子の関係で凸凹模様が通常と異なるため規格外)を使う。直径25mmの丸い穴にしているのがいいんだ。もし、背割りを入れたら、木裏が開くから木表がそりかえってしまう。丸い孔にすると内側に収縮するから反らないんだ。

[ 月間住宅ジャーナル ]
背割り材の反対側をよく見ると、たしかに微妙に反っているように見えます。

[ 守谷 ]
孔をあけると素人にはもったいないようにみえるかもしれないが、無垢材は養生をしていると反ったり、ねじれたり、ひびが入ったりするから補修や手入れが大変なんだ。
テーブル板は、厚いので、数年かけて養生していると、反りやねじれだけでなく、割れが出てくる。特に割れは厄介でボンドやかすがいで割れの進行を食い止めるんだが、また次の割れが出てくる。割れを極限まで減らせるのが、丸い孔を空ける方法だ。ドリルで孔を空けていると中から水がしみ出してくる。それくらい内部はしめっているんだ。
建具用の木が反るときは、木表側に両端が反るから、手押しがんなで両端を削ってまっすぐにする。木裏側は、真ん中が出っ張るから、自動かんなで削ってまっすぐにする。
真っすぐにしてから、またトタンの屋根の下の外気下で養生をして、半年くらいすると、また1mmくらい反ったりねじれたりしてくる。この2度目の狂いを見つけて、まっすぐにすることが重要なんだ。そうしないと無垢建具には使えない。
一般的な建具屋の場合、桧や杉は、注文があってから材木店から材料を仕入れる。納期までには限られた日数しかないから、木材の狂いを削り直す時間がない。だから、狂いの起きにくい柾目の板しか使わないから値段が高くなる。
反りやねじれは樹種によっても差がある。初心者でもわりと扱いやすいのは杉だ。ヒノキは結構難しくて、よく反ったりねじれたりするから難しい。
初心者は絶対扱わない方がいい木がある。ケヤキだ。ケヤキは、祭りのお神輿なんかに使う硬い木なんだが、養生が大変なんだ。乾燥させると、スルメイカみたいに反り返ってくる。削って削って繰り返している内に、とうとう全部なくなってしまうのがケヤキなんだ(笑)。
こんど、お寺をやることになって、一枚板の引き戸と木製サッシをたくさんつくることになった。そこではケヤキも使うんだ(写真)。これは左右対称に採ったものを養生したものだ。ケヤキもうまく養生できれば、一枚板の引き戸に使うことができるようになる。
新型コロナが流行して、新築は少し減ったようだけど、リフォームは注文が多くきてるよ。家にこもる日が多くてストレスが溜まりやすいから、木の癒しなんかが、かえっていいんだろうな。