木づかいのコツ 丁寧な仕事では二度加工する – 『月刊住宅ジャーナル』2020年11月号掲載

守谷インテリア木工所が月刊住宅ジャーナル(株式会社エルエルアイ出版) 2020年11月号で紹介されました。以下に転載します。
全文はこちら( monthlyhousingjournal_2011d1.pdf )。

連載 直伝 木づかいのコツ 丁寧な仕事では二度加工する

第19回(全20回予定)
守谷建具(埼玉県)代表 守谷和夫

大留めのコツ

[ 守谷 ]
木材の乾燥について知っていれば、大工仕事だって変わってくる。例えば、大留めなんかがそうだ。桧の一枚板をノコギリで正確に45度に切ってつなぐんだが、これが難しい。

[ 月間住宅ジャーナル ]
すし屋のつけ台(カウンター)でよく見かけますね。

[ 守谷 ]
正確に切ってから、二つをつないでも、後からすき間が透いてきてクレームになる。しょうがないから、ボルトをつかって締め付けたりして、無理やり固定したりするから、すごく手間がかかるんだ。

[ 月間住宅ジャーナル ]
インターネットでは、「建築用語集」というのがありまして、「角が透きやすいので完全な乾燥材を使うのが良い」と書かれています。こうした幅広材は、市場では“役物(やくもの)”と呼ばれ、高値で取引されていますが、規格の材寸ではないので全て自然乾燥材です。「完全な乾燥材」なんて本当にあるんでしょうか?

[ 守谷 ]
カウンターに使う幅400mmから450mmの桧の一枚板は全て自然乾燥材だ。機械乾燥したものは、内部も一定の水分になるが、内部割れを起こすから仕上げ用には使えない。
こんなことが起こるのは、木材の乾燥に関する基本知識が不足しているからなんだよ。
この斜めにカットした木材の水分がどのくらいか考えてみれば、すぐに分かることだ。
45度に切った先端の方は、木材の小口の面になるから、含水率としては、大体12から13%くらいになる。それに対して奥の方は、木材の内部から切ったばかりだから含水率が違う。自然乾燥材の内部だと含水率は大体20%くらいだ。つまり、大留めの両端で含水率が12%と20%と違っていて、時間が経つと12%と20%では収縮の仕方が異なるから、形が狂ってくるんだ。

[ 月間住宅ジャーナル ]
考えてみれば、まったくその通りです。

[ 守谷 ]
では、どうやって切ればいいかというと、時間を置いて2度切りすればいいということだ。最初は大体の寸法で荒っぽく切り落とす。しばらく乾燥させて形がゆがんできたら、今度は正確に45度の角度で切り落とす。そうすれば、含水率が同じだから、狂うことはない。

削り出しの精度も向上

[ 守谷 ]
こんな風に、「精度を出したい時は、2回切る」という考え方は、色んな場面で応用が可能だ。例えば、最近は、展示会で、NCルーターや、色んな特殊加工機を使って、自動的に削り出した木材の展示品を見かけることがある。

[ 月間住宅ジャーナル ]
木を削り出してコップを作ったり、大きなものですと、自動車の形にまで削り出すものまでありますね。

[ 守谷 ]
そうした展示品をどうやって加工したのか聞いてみると、自動で削り出したのはいいものの、木くずだらけだから、やすりで丁寧に磨き直したりして、加工するよりも磨く方によっぽど手間と時間がかかったなんて言うんだ。
そういう場合は、大きさが直径で0.1mmくらい違うドリルを2本用意しておいて、最初は小さい方のドリルで荒削りをして、次にちょっと大きい方のドリルで仕上げの削りをすると、木くずを出さずに全部自動できれいに削ることができるんだ。
こういうことは、丁寧に加工する時の道具の使い方の基本として覚えておいた方がいい。

月刊住宅ジャーナル(株式会社エルエルアイ出版)2020年11月号より転載