守谷インテリア木工所が住宅ジャーナルウッドテクノロジー(株式会社エルエルアイ出版) 2025年06月号で紹介されました。以下に転載します。
全文はこちら( jwt_2506d1.pdf )。
直伝 木づかいのコツ 屋外門扉を腐らせないコツ
守谷和夫 (有)守谷建具店 守谷インテリア木工所
[ 守谷 ]
屋外でも腐らない木の門扉を頼まれていて、ついに完成した。明日出荷するところだ。都内のリフォーム物件(発注元:㈱アヴェントハウス、東京都中央区日本橋)で採用される。1枚2,300mmの観音開きの門扉2枚、間口4,600mmで腐らない処置をしている。
[ JWT ]
縦桟を近くで見ると木の色がそれぞれ違って見えます。
[ 守谷 ]
杉の赤身と黒杉をまぜて使っているから色が違っている。黒杉というのは、文字通り黒い杉のことだ。杉材を伐採したばかりの丸太の切り口は普通の色だが、空気に触れると黒く変色する。おそらく酸化作用と思われる。乾燥しにくく腐りにくい特性を持ち、昔は風呂桶に使われていた。
[ JWT ]
腐らない門扉のコツは材料選びだということですね。
[ 守谷 ]
材料選びも大事だが、計算することも大事だ。計算とは、木がどのように変化するかをあらかじめ予想して、対策をほどこしておくことだ。この門扉はどこが弱いと思う?
[ JWT ]
雨が当たる框の小口なんかは、傷みやすいのでは?
[ 守谷 ]
そう、框や上桟の上部は、今は仮でベニアを貼っているが、現場で銅板を張って雨水侵入の対策をする。これは多くの木製門扉でやっていることだ。なぜ銅板を使用するかというと酸化により緑青が発生し、防腐剤の役目をするからだ。うちでこだわっているのは、上桟と框の留め方だ。ここは腐りやすいので、一般的なほぞで留めるのではなく、ステンレスのビスで留めて込み栓を入れている。
その他にも弱い箇所がある。下桟だ。こうした門扉が月日が経ってどのように壊れるかというと、縦桟を伝って流れ落ちてきた雨水がほぞの木部を腐らせて縦桟が外れる。さらに下桟と框の隙間に雨水が侵入してほぞを腐らせ、下桟が外れてバラバラになる。
そうさせないための対策として、塗装は基本3回塗りとして、ほぞの中も塗る。下桟は5~6回塗る。ほぞに接着剤をつけると劣化するので接着剤は使わず、両面テープを厚くして締め付けて防水処理をする。こうした取り付け方法は、アルミサッシの枠のやり方を応用している。それと、小口は面取りをして塗料が浸透しやすいようにしている。
下桟と框を留めるほぞは、1枚の巾2,300mmの門扉であれば、框巾100mmとすると異常気象により杉赤身(心材)で収縮率0.5~1.0%、白太(辺材)で1.0%~1.5%、桧でも同程度、扉2枚で4~5mmの遊び(余裕)を持たせる。6~7月の長雨で框1本あたり約1mm、4本で4mm伸びる(膨張する)と予想している。玄関の開き戸でも框1本で3~4mm増えるのでクレームの原因となる。
この大型の門扉では、戸車に高さがあるから問題ないが、一般的な引き戸では、戸車にも工夫が必要だ。台風の雨風でレールとの隙間に雨水が吹きこむと、戸車の接合部が腐りやすくなる。そのため高さの高いレールを使って防腐対策をする。玄関引き戸となると重量25~35kgとなり戸車の固定部に無理が生じてくる。そのため、木部の劣化対策として40kg用の戸車を2個ずつ4個入れることにより、荷重が分散されて動きもスムーズになる。特に必要なのは、框の上下部分、戸車固定部分に防腐オイルをしみこませることで、これが大事だ。