木づかいのコツ 外まわりの建具のコツ2 – 『月刊住宅ジャーナル』2021年10月号掲載

守谷インテリア木工所が月刊住宅ジャーナル(株式会社エルエルアイ出版) 2021年10月号で紹介されました。以下に転載します。
全文はこちら( monthlyhousingjournal_2110d2.pdf )。

連載 直伝 木づかいのコツ 外まわりの建具のコツ2

補遺篇(其ノ参)
守谷建具(埼玉県)代表 守谷和夫

[ 月間住宅ジャーナル ]
前回(7月号)は、寺院向けに出荷する無垢建具をもとに、外回りの建具のコツについて構造面から教えてもらいました。塗装のコツについても教えてください。

紫外線カットと墨

[ 守谷 ]
最近では、木材にはガラスを謡った無機系の塗料が良いという話を聞くが、何かの誤解ではないかと思う。塗料の組成を詳しく見ないと分からないが、単純にガラスであれば、木材は収縮してもガラスは収縮しないので、表面に目に見えない割れが出て水分が入ってくる。ウレタンだと木材に追従して収縮するので、有機系の塗料でなければ木材の塗装には適さない。
守谷建具では、紫外線をカットする自然系のウレタン塗料を使っている。防腐剤としてタンニン(柿渋の一種)を混ぜていて、その上に紫外線吸収剤の透明なウレタンを塗る。
お寺の古い門札を見たことがあるかな。木が傷んでいるのに、墨で書いたところだけが、新しくて傷んでないから不思議だろう。

[ 月間住宅ジャーナル ]
そういわれてみれば、墨が塗ってあるところは傷んでいません。不思議ですね。

[ 守谷 ]
あれは、黒い墨の成分が紫外線をカットしている。からだ。墨の部分は浮いて、周りは劣化する。化粧品でも同じ効果が出るが、表層の墨で紫外線をカットして下の木材に紫外線が届かないようにしているんだ。
ただし、黒だと赤外線を吸収するので温度が上昇するから、夏になると割れるかもしれない。だから、温度の上昇しない透明な紫外線カットの塗料を使っている。
木材は、風が吹かないと割れないんだが、30~40度の温風でも風が吹くと急激に乾くので割れやすくなる。服は無風だと乾かないが、風が吹くと衣類がすぐに乾くのと同じことだ。

面の取り方に注意

[ 守谷 ]
木製建具、特に木製サッシは、未塗(みそう)で現場に納品することがほとんどだ。この習慣を変えなければ、塗料の塗り方を学んでも役に立たない。現場では、わざわざ丁番(ちょうばん)まではずして塗る職人なんかいないし、一番弱い胴付(どうつき)の木口(こぐち)の塗装までできないから劣化が早くなる。まずは、材料費を少しでも減らしたい元請けを説得して、未装じゃ駄目なんだということを納得してもらって変更させないとだめだ。
特に外部建具、サッシは組立て前に木口に塗装することだ。注意すべきことは、木口の面の取り方だ。まず、胴付きにほぞやダボを差し込む前に、守谷建具では、鉋で45度の面をとってから木口を塗装する。こうすると塗料がしみこみやすくなる。
なぜ、45度の面をとるかというと、木材の水を吸い込む道管(どうかん)は、気圧の変化で浸透圧が異なってくるからだ。
先ほど服が乾くのには風が必要だという話をしたが、木材の木口面が塗料を吸い込むのには、直線の断面にすると、同じ気圧になるから吸い込みにくくなる。斜め45度の面をとると道管の面積が大きくなり、気圧が異なって塗料を吸い込みやすくなる。
室内用の無垢建具では、ここまで塗装はしないが、外まわりの建具では、木口面を樹脂化しないと、水分を吸い込んでしまうから木が傷みやすくなる、こうやって組み立て時にあらかじめ継ぎ目を塗装していけば、雨が降っても大丈夫だというわけだ。
やりにくい箇所としては、ダボ(ほぞ)の箇所がある。ダボの箇所は受ける前にやると接着しにくくなる。だから、塗装した後にダボを掘って接合させるんだ。それと、下枠(したわく)に水抜き用の穴をあけるのをわすれないことだ。また、門戸などは、ミゾの中に5mmぐらいの銅パイプを入れると、通気と銅の緑青(ろくしょう)で防腐効果が出る。

月刊住宅ジャーナル(株式会社エルエルアイ出版)2021年10月号より転載




不動院の増築・改修工事が完成(埼玉県入間市) 一枚板の無垢建具を多数採用 (株)池田建築 / (有)守谷建具 / (株)安田設計 / (株)石田設計事務所 – 『月刊住宅ジャーナル』2021年10月号掲載

守谷インテリア木工所が月刊住宅ジャーナル(株式会社エルエルアイ出版) 2021年10月号で紹介されました。以下に転載します。
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不動院の増築・改修工事が完成(埼玉県入間市) 一枚板の無垢建具を多数採用
(株)池田建築 / (有)守谷建具 / (株)安田設計 / (株)石田設計事務所

埼玉県入間市の寺院で増築・改修工事が行われ、今年7月に完成。金色に彩られた須弥壇(しゅみだん)で完成記念の法要が営まれた。
江戸初期の創建と推定される寺院で、地元では不動院という名称(正式名称:源光山明王寺不動院)で知られており、不動明王を本尊として祀っている。大正7年(1918年)の火災で全焼した後、大正13年(1924年)に本堂・鐘楼堂を再建。昭和43年(1968年)二度目の本堂再建。そしてこのたび、老朽化が進んだことや、大勢の利用者を収容することを想定して、増築・改修工事を実施。工事は(株)池田建築(埼玉県入間市)が4代にわたり手掛けている。
増築としては、既存の本堂部分を新たに外陣(がいじん)とし、新たに内陣(ないじん)と須弥壇を増築、新設廊下を設けた(図参照)。改修工事では、漆喰(しっくい)を塗り直し、建具(たてぐ)を入れ替えたほか、耐震性を高めるための工事が行われ、外陣と内陣の間に立つ既存丸柱(直径240mm)はそのまま活かして、外陣及び既存廊下の既存壁の一部を耐力壁に改修、既存開口部を新設耐力壁に改修、柱を新設した。また、既存の屋根瓦を軽量の金属瓦(セキノ興産製)に葺き替えた。天井と床には断熱材としてグラスウール100mmを敷きこんだ。

無垢建具を多数新設

今回の増築・改修工事の特色の一つとして、5枚建の引き違い戸など多数の無垢材(むくざい)を用いた建具(無垢建具)を採用しながらも、一般的な建築工事費レベルの予算(約1.5億円)で実現することができたということが挙げられる。
一般的な寺院建築では、木材にかかる予算が大きく、今回の工事では新設廊下・既存廊下・内陣の床材と、増築部分の化粧材全て及び改修部分の化粧材交換部材全てを米ヒバ材とした。それだけでも相当の費用となっているが、既存部分の丸柱・化粧梁をそのまま流用することで、大径材にかかる費用を削減し、既存の二重菱文様の欄間(らんま)もそのまま活かしている。一般的には柾目(まさめ)どりの一枚板を取るだけの大径材を入手することが困難であることなどから、寺院などで古くから用いられてきた板戸(唐板戸(からいたど))を新設することは珍しいが、ここでは約30枚の無垢建具を新設した。建具の本数(ここでは枚数)としては、参拝や法事に訪れる利用者が通る玄関、回廊、廊下、外陣、内陣、脇の間には、木製建具があしらわれており、それ以外の物置、水屋(みずや)、須弥壇、新設廊下、脇の間にはアルミサッシ(22枚)を設置。
屋外側に接する木製建具としては、回廊側と新設廊下に全部で14枚(うち硝子(ガラス)入り横桟引戸6枚、玄関硝子入り縦桟板引戸4枚、正面下手にドア1枚、新設廊下側に硝子入引戸2枚)を新設。
室内側の木製建具としては、板戸が全部で15枚(うち玄関こあがりの硝子入り縦桟板引戸4枚、内陣と脇の間を仕切る杉引板戸5枚、内陣ー仏間を仕切る杉板引戸2枚、内陣ー水屋を仕切る杉板引戸2枚、玄関左右の記帳台に舞良(まいら)戸2枚。
新設障子が全部で22枚(既存廊下8枚、外陣ー回廊6枚、既存廊下8枚、新設廊下6枚、脇の間4枚、外陣ー新設廊下4枚)。七宝文様の欄間2枚(内陣-脇の間の上部)も新設。
こうした木製建具のほか、アルミサッシ22枚を含めると全部で73枚の建具が新設された。また、既存部分に設けられていた欄間、火灯窓はそのまま活かし、墨絵(すみえ)の障子も再利用され
建具製作・設置工事を担当したのは(有)守谷建具。地元の建具店であり、近年では無垢建具を手掛けることが多い。同社の無垢建具は、木材の反り(そり)・変形の性質(反り返った木材はその後変形しない)を利用して、自然乾燥で養生しあらかじめ木材を変形させた後に、加工機等で削りなおして正寸に加工して製作するという、いわばハイテク無垢建具の第一人者として知られている。通常であれば柾目(まさめ)を利用する建具が、変形しやすい板目でも製作可能となるため、材料費の大幅なコストダウンが可能となる。
守谷建具によると、普段は住宅や店舗向けの建具製作が多く、寺院を手掛けるのは今回で3度目となる。過疎化と檀家減少により無垢建具の設置が予算的に難しくなった寺院から無垢建具の製作依頼を過去に受けたこともあり、図面に合わせて無垢建具を製造・地方発送し、地元の業者が設置工事を行う形での注文も受けているという。

建具技術の特色

今回新たに設けた技術上の特色として、守谷氏自身は、業務の傍ら、山寺のお堂を訪ね歩いて築年数ごとに胴付(どうつき)のすき具合を観察し、経年変化を調べて、特に外気や風雨にさらされる外回りの建具の対候性の強化を図った。
外回りの建具には、回廊突き当りの一枚ものの杉板(樹齢約千年)に、天然オイル(ドイツ製天然成分塗料と市販のオリーブオイル1.7リットル)をしみ込ませて耐水性・対候性を強化。
また、回廊の外気に面する建具の建て込みでは、通常はかかり代15mmのところを20mmとし、雨の吹込みによる劣化防止のために段違いとし、外に面する建具は通気性をよくするためにすき間をもうけた。レールは通常6~7mmのところを12mmとし、「寺の軒には草木も生えぬ」と言われるように触媒効果を出すために銅板を巻いた(写真)。
玄関両側の廊下は、法事の際の受付・記帳台などに利用されることが多い部位で、設計段階では、上にはね上げて開く蔀戸(しとみど)を想定していたが、近年では、吹き込んだ強風で跳ね上がってしまう事故もあるため、安全対策のため、内側に閉じて開閉できる舞良戸(まいらど)を設けることにした。木目の意匠としては、欅(けやき)や杉では、左右対称に組み合わせて目のきれいなところを残して製作した。

月刊住宅ジャーナル(株式会社エルエルアイ出版)2021年10月号より転載

















木づかいのコツ 外まわりの建具のコツ1 – 『月刊住宅ジャーナル』2021年07月号掲載

守谷インテリア木工所が月刊住宅ジャーナル(株式会社エルエルアイ出版) 2021年07月号で紹介されました。以下に転載します。
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連載 直伝 木づかいのコツ 外まわりの建具のコツ1

補遺篇(其ノ弐)
守谷建具(埼玉県)代表 守谷和夫

[ 月間住宅ジャーナル ]
地球温暖化の影響で住宅の材料には省エネルギー性のすぐれた材料が求められており、地域の建具店で製造する木製サッシにも注目が集まっていますが、天然素材だけにメンテナンスが難しいとも言われています。どういったことに課題があると思いますか。

[ 守谷 ]
窓や玄関など雨風があたる所につける無垢建具については、適切な処理をしないと劣化がしやすくなる。守谷建具ではこうした外回りに対応した建具があるが、他ではできないことが多いので、業界全体で技術の底上げを図る必要がある。
課題は大きく分けると三つある。ひとつは構造、次に木材の木裏・木表の使い分け、そして三つ目が、塗装の下地の木材の表面の加工だ。

構造上の課題

[ 月間住宅ジャーナル ]
住宅には構造力学はありますが、木製建具には構造力学上、正しい造りという話は聞いたことがありません。

[ 守谷 ]
木造住宅は伊勢湾台風の頃から大地震が起きるたびに法律が改正されて、地震に強い構造が進化していった。一方で、木製の建具は、昭和30年以降、構造的に大きな変化はない。サッシメーカーがどんどん大きくなって、開口部に使う木製建具が減り続けたこともあり、技術的には取り残されていった。
その結果どうなっているかというと、そこに立てかけてあるガラス戸を持ってみると分かるよ。

[ 月間住宅ジャーナル ]
ものすごい重いガラスですね。一人ではとても持てません。

[ 守谷 ]
それは今の住宅で一般的なLOW-E複層ガラス戸だ。大体40キロくらいある。
省エネ化が進む中で、サッシの高断熱化が進んで、ガラスも進化して、複数のガラスを重ねて間にガスや金属膜が入ったガラスが増えた。
その結果、どうなっているかというとガラスが重すぎるんだ。これでは普通の建具屋が持っている木製建具の技術では、ガラスを支える枠すら作ることができない。

[ 月間住宅ジャーナル ]
重いガラスを支えるにはどうしたらいいんですか。

[ 守谷 ]
支えるには建具の構造を変えなければだめだ。木製サッシを屋外で数年雨風にさらしてみれば分かる。一体どこから壊れていくと思う?

[ 月間住宅ジャーナル ]
おそらく台風や大雨がきた時に、木の枠がふやけて、ガラスから外れて壊れるんじゃないでしょうか。実は、拙宅の旧家の木枠のサッシはこんな風に壊れました。

[ 守谷 ]
そのとおり。木製サッシは下桟と框を継いでいる箇所が弱って、ほぞが腐って壊れるんだ。昔の木枠に単板ガラスをはめただけの窓ならろくな塗装もしてなかったから、雨風にさらされて濡ても雨天、晴天が繰り返されていたので、ほぞが腐ることはなかった。最近では異常気象により高温多湿が一、二カ月続くのでガラスの溝からの雨水でほぞが腐ってしまう。
木製サッシを雨にさらして傷めないようにするためには、もちろん庇を深くするとか窓まわりの設計上の工夫も必要だが、重要なのは、戸車の位置だ。木製サッシメーカーが作ると、元々ヨーロッパの技術だから、框を彫り込んで戸車をつけるんだが、これが良くないんだ。
重さ40キロもするLOW-E複層ガラスの重心がどこにかかるか考えてみればすぐに分かるだろう。

[ 月間住宅ジャーナル ]
図を描いてみれば一目瞭然です。ガラスの荷重が、下桟にかかります。

[ 守谷 ]
ガラスが重いのにそれを支える下桟が細いから、ガラスの重量は、下桟と框をつなぐほぞにかかってくる。雨に濡れてほぞの強度が落ちて、ガラスの重みもあって外れやすくなる。だから木製サッシは壊れやすいんだ。
だから、守谷建具では、こうした問題点を克服して、木製サッシを製造している。
まず、戸車は框ではなく、太くした下桟につける。
重量のある建具には、戸車を2カ所ずつつける。そうすると、ガラスの荷重がかかる直下の戸車で重みを受け止める構造になる。
框と下桟の接合部には、特殊な長ビスを取り付ける。ビスが増えると断面欠損が増えて劣化しやすくなるから1本で固定する。
守谷建具のような造りなら、木造住宅の構造の設計者でも納得するだろう。
こうした理論的な裏付けというのも、建具の業界では不足しているんだ。
建具屋の業界では、構造力学の知識はあまり必要なかったから、先代から教わった技術を守っている業者にとっては、新しい技術との融合によって異常気象に強い建具ができるようになって、未来に活路が見えてくると思う。

月刊住宅ジャーナル(株式会社エルエルアイ出版)2021年07月号より転載

木づかいのコツ 木と地球環境の成り立ち – 『月刊住宅ジャーナル』2021年06月号掲載

守谷インテリア木工所が月刊住宅ジャーナル(株式会社エルエルアイ出版) 2021年06月号で紹介されました。以下に転載します。
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連載 直伝 木づかいのコツ 木と地球環境の成り立ち

補遺篇(其ノ壱)
守谷建具(埼玉県)代表 守谷和夫

[ 月間住宅ジャーナル ]
ごぶさたしておりました。その後、お仕事の方は、順調ですか?

[ 守谷 ]
元気でやってるよ。仕事の方は、店舗の改装工事で納品することが増えてる。今、コロナで不景気といっても、いいビルで空きが出ると、新しい店が入って工事をしたり、お客さんが来ない今のうちに改装工事をしとこうという店が結構あるもんだから、建具の注文がよく来てるよ。先を見越して見ると、今が準備の時期なんだろうな。

[ 月間住宅ジャーナル ]
ところで、建具屋さんにこういう質問をするのもなんですが、木材というのは、なぜ地球環境の保全にいいのでしょうか。

[ 守谷 ]
木材がなぜ地球環境にいいのかってことは、よく見学に来たお客さんに説明するよ。意外と知らないみたいだし、みんな同じことしか知らないから聞いて驚くようだよ。

[ 月間住宅ジャーナル ]
木には二酸化炭素の蓄積効果があるとかですか?

[ 守谷 ]
そうそう、特に業者の人は、決まりきった予備知識があるだけで理論的な説明と理解ができていないんだ。
理論としては、まず、これだけは覚えておいた方がいいことがある。それは、「ゼロの法則」だ。

地球環境~ゼロの法則

[ 守谷 ]
「ゼロの法則」というのはこういうことだ。
まず、木材は二酸化炭素を蓄積している。それをもっと具体的に説明すると、こんな過程となる。
まず、木は光合成をする。光合成に必要なのは、酸素と水と、太陽の熱と光だ。杉の木の場合は、30年から40年までは育ちざかりで、光合成が活発なのでよく育つが、50年、60年、100年、500年、1000年と経ってくると、光合成の力が鈍ってくるから、育ちが悪くなって目が詰まってくる。

[ 月間住宅ジャーナル ]
目が詰まると硬くなるから木材には有用かもしれませんが、光合成の力が落ちるから、早く伐採して使うことが推奨されていますね。

[ 守谷 ]
そんな木を40年で伐採して、薪や発電に使うとする。燃やすと何が出てくる。

[ 月間住宅ジャーナル ]
ええと、熱と二酸化炭素でしょうか。

[ 守谷 ]
炭素(C)が、空気中の酸素(O)と結びついて、不完全燃焼すると一酸化炭素(CO)になり、完全燃焼すると二酸化炭素(CO2)となる。
燃やすと熱が出るのは、光合成をして育った時の太陽工ネルギーの蓄積として熱を発生するんだ。
つまり、木が燃える時に使う酸素とは、木が光合成をして作ってきた酸素に等しい。そのために、木が燃えると工ネルギーがプラスマイナスでゼロになる。これが、「ゼロの法則」だ。

[ 月間住宅ジャーナル ]
燃焼する時の熱というのは、もともと太陽の熱だったんですね。気づきませんでした。

[ 守谷 ]
しかし、木は単純に育って燃えて差し引きゼロになるだけじゃない。なぜなら、他の星にいくと酸素がないが、地球には酸素がある。これは一般的に植物のおかげだと言われているが、どうして酸素が増えていったのか説明できるか?

[ 月間住宅ジャーナル ]
植物は二酸化炭素を使って酸素を出すからですか?

[ 守谷 ]
「ゼロの法則」から言えば、光合成による成長から伐採・利用・燃焼に至るまでの過程では、熱と水と酸素・二酸化炭素の量は差し引きで等しくなるから、酸素が増えるという説明はつかない。
手がかりになるのは、植物が発酵する過程だ。木や植物が腐るには、菌を必要とする。菌がモノを腐らせるのに使うのが酸素だ。
例えば、しょうゆや味噌や日本酒を作るのには、大きな樽に入れて発酵させる。
発酵すると、表面に泡がぶくぶくと出てくるだろう。あの泡は二酸化炭素だ。発酵菌が二酸化炭素(炭酸ガス)を出しているんだ。
この時に菌が使う酸素の量は、光合成で使う酸素の量とほぼ同じだ。しかも、発酵とは、酸素を消費しない呼吸(嫌気呼吸)でもあるんだ。

[ 月間住宅ジャーナル ]
お酒の工場で泡がブクブクしているのをテレビで見たことがありますが、あれは地球環境問題の解決の手がかりだったんですね。

[ 守谷 ]
食品としてうまく発酵させるのには、ある程度の酸素も必要とする。だから、味噌やしょうゆや酒づくりでは、樽の中をかますんだ。かきまぜると中に酸素が入るから発酵が進んできて、二酸化炭素(炭酸ガス)が出てくる。
そうした発酵によってできあがったアルコールは地球にやさしい燃料と言える。アルコール燃料は燃やす時に酸素を使うが、発酵する時に酸素をあまり消費しないから、全体的に二酸化炭素の排出量が少なくなるんだ。

[ 月間住宅ジャーナル ]
バイオエタノールが環境にいいといわれるのは、発酵のおかげで、ライフサイクルにおけるCO2の排出量が少ないからなんですね。

[ 守谷 ]
一方で、石油も石炭も、もともとは、植物が朽ちてできたものだ。地球に多くの酸素があるのは、石油や石炭のように、かきまぜられることなく、酸素をあまり消費しなかった化石資源が地下に眠っているからなんだ。

[ 月間住宅ジャーナル ]
つまり、地球に酸素が多いのは、光合成や腐敗・発酵のおかげで、酸素を消費する量よりも、生成する量の方が多かったからなんですね。

[ 守谷 ]
しかし、産業革命以降、人間は、地下の化石燃料を燃焼させることで産業を発展させてきた。
石油や石炭は、アルコールなどに比べると、密度がずっと高くて、酸素が少ない環境で長年堆積してできたもんだから、燃焼するとものすごい量の酸素を使うし大量の炭酸ガスを発生させる。
例えば、炭を作るために炭焼き小屋で焼くときは酸素をほとんど使用しないので炭化して残るが、燃焼時に大量の酸素を必要とするから、一酸化炭素中毒のおそれもある。
だから、石炭火力や、原油を燃やす火力発電はダメで、バイオエタノールを使うのが環境にいいという説明がつくんだ。

[ 月間住宅ジャーナル ]
ゼロの法則をよく理解していないと説明がつきませんね。

[ 守谷 ]
をれにコンクリートを使うと環境に悪くて、木を使うと環境にいいということも理論的に説明がつく。・コンクリート(セメント)というのは、原料に石灰岩といって動植物(プランクトン)が堆積して石化した材料を使う。コンクリートのもとは、石灰岩だから、コンクリートの生成時には多くの熱エネルギーを使用して炭酸ガスが発生する。
だからコンクリートは環境に良くないということだ。

[ 月間住宅ジャーナル ]
地球の46億年の歴史と生命活動の蓄積によって人間が生きていることを実感させられますね。

月刊住宅ジャーナル(株式会社エルエルアイ出版)2021年06月号より転載

木づかいのコツ 無垢・フラッシュの反り対策 – 『月刊住宅ジャーナル』2021年01月号掲載

守谷インテリア木工所が月刊住宅ジャーナル(株式会社エルエルアイ出版) 2021年01月号で紹介されました。以下に転載します。
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連載 直伝 木づかいのコツ 無垢・フラッシュの反り対策

第20回(全20回予定)
守谷建具(埼玉県)代表 守谷和夫

[ 月間住宅ジャーナル ]
前々回(10月号)では、テーブル向けの厚板の養生のコツについて取り上げました。薄い板にも養生のコツはありますか。

[ 守谷 ]
テーブル用だと厚みは5mmほどでつくっているが、ドア用だと厚みは30~10mmほどだ。
無垢材の厚みというのは、狂いが完全になくなった時に決まる。コンマ何ミリといった精度でやろうとして片方を削ると、しばらくしてまた狂ってくるから、高い精度で厚みを決めることには無理がある。ちょうどいい厚みというのは養生ができたときの厚みだ。
一般的な建具屋はなかなか無垢ドアをやろうとしない。これは指定の寸法に合わせようとして削り直したり、調整に手間どるせいでもある。これはできる、これはできないということをはっきり意識しておくと、仕事の仕方も違ってくる。

木の狂いは張力の違い

自分は、養生をする時の考え方として「張力(ちょうりょく)」という語をよく使っている。木材は木裏(きうら)と木表(きおもて)で違うから曲がったりねじれたりして狂う。何が違うのかというと、木と木表では、表面張力が違うんだ。
もともと木材というのは、丸太からできているものだから、木表と木裏は丸太の形でちょうどバランスが合うようにできている。その丸太を挽いて四角い板を切り出すのだから、木表と木裏で張力が違うのは当たり前のことだ。
挽いた木材は、時間が経つと、張力を均衡に保とうとする。つまり、木表と木裏の形をくずしてバランスのとれた状態にまで変形させる。これが木材が狂うと言っていることだ。
例えば、10人同士で赤勝て白勝ての綱引きをしている状態が丸太の状態だとすると、板にした状態では、赤が10人で白が5人で綱引きをしているような状態になり、
均衡が崩れて白が赤に引っ張られる。これが、木が狂うということだ。
養生では、引っ込んでくる木表を手押しがんなで少し削りとり、ふくらんでくる木裏を自動がんなで多めに削りとり、木表と木裏の表面張力の均衡がつり合うまで繰り返す。
削った後でどのくらい狂うかというと、樹種による違いもあるが、木目でも違ってくる。例えば、同じ杉でも植林木と実生(みしょう)による違いもあるし、玉木(たまもく)、シワ木(もく)、流れ木によっても異なる。
植林木(苗から育った木)は木目が粗いから樹齢は300~500年が限度だ※。実生(種から育った自然の木)は目が詰まっていて油も濃いから1500年持つ。玉木や流れ木も木目が詰まっていることが多い(写真)。
例えば、アテ(風圧を受けて特有のヒビの入った木など)は、普通は木表が引っ込むのに、アテだと木裏が引っ込んでくる。青森産のヒバを植林した石川産のヒバ(通称:能登ヒバ)は、自分が扱った経験では、日本海の風が強いせいなのか、アテが多いから、木の狂い方も通常とは違ってくる。

フラッシュの反り対策

[ 月間住宅ジャーナル ]
一般的な建具店で製作の多いフラッシュドア(ベニアとシートを張ったドア)については、反り曲がりで注意すべき点はありますか?

[ 守谷 ]
最近は無垢建具の仕事が多くなったが、10年以上前は、フラッシュドアを多く作っていた。
フラッシュドアでも、先ほど説明した表面張力の理論が応用できる。
シナ合板の2mで伸びると、大体3mmくらい反ってくる。
フラッシュでベニアが反らないようにするコツは、ベニアを積上げておかないということだ。二日間くらい、一枚一枚をばらばらにして干しておくといい。なぜかというと、ベニアの表と裏では、湿気が均等にならないから、日があたっている方は乾いてしまい、湿っている方は、縮んでしまう。表と裏の湿度が違うから反ってくるんだ。
障子やふすまの場合は、紙を張る方が引っ込む。そうすると障子やふすまを室内に設置した時に、壁の側がふくらんでぶつかってしまってクレームが発生する。
そういう問題が起きないようにするためには、紙を張る方を少し日にあてておく。日にあてると、ベニアが縮んで、縮まった方が伸びてくるから、それをプレスして張ると、ベニアが出っ張ってくるのを抑えることができる。
あるいは、雑巾でぬらしてバランスをとってもいい。壁に付く方に濡れた雑巾をあてて、壁に付く側のベニアをぬらすと、ベニアが伸びてへこんでくる。そうしてから濡らしていない方にプレスをして張ると、壁に付く側がふくらんで壁にぶつかるということがなくなる。戸ぶすまだったら、この手が一番だ。
フラッシュドアの方は、シナ合板の表なら表だけを1日か2日干しておくといい。干した側をみんな表にしてからプレスをすれば、ベニアの収縮率を低くすることができる。
フラッシュの反りでクレームが出るのは大体5月の連休のあたりだ。夏の温度の高い時は少ないし、6月の梅雨にゆっくり乾かすと反りが出にくくなる。湿気が低くて乾きやすい5月頃に、特に注意が必要だ。

※ 樹木の芯が腐って空洞(くうろ)になり、木材には使えないことを指す

月刊住宅ジャーナル(株式会社エルエルアイ出版)2021年01月号より転載