木工製品のコスト対策

樹齢40~50年の小径木を有効利用

日本は杉や檜などのいわゆる人口林が森林全体の約4割を占めています。それら人工林は一定面積内に非常に多くの本数の苗木を植え、主伐材になるまでに植えた苗木のうちの4/5を間伐し、まっすぐな品質の高い材へと成長していきます。特に先にも触れた柾目材を切り出す直径500~600mmの木を育てるには、成長の早い針葉樹でさえ約100~150年の年月を要します。

そのように手間と時間をかけて育てた国産材が、海外からの安価な木材の流入により価格が下落していることが近年の新聞・テレビ等で取り上げられ話題となっています。特に、柾目の切り出せない小径木は非常に安い価格で市場にて取引されているのです。

また、木はたくさんの二酸化炭素を吸収・固定して成長していきますが、30~40年で成長ピークを迎え、その後その二酸化炭素の吸収速度は徐々に遅くなります。さらに、杉や檜などの針葉樹は次の子孫を残すために、大量の花粉を飛ばすようになるのです。そのため、成長ピークを過ぎた木を伐採し再び植林をすることは、空気中の二酸化炭素を減らし、花粉の飛散を抑える大きな効果につながります。

そこでこの小径木から切り出した板目材を扉として利用することで、材料費のコストダウンを図るとともに、自然環境保護に繋がります。

*参考資料:林野庁ホームページ

装飾を省いたシンプルデザイン

弊社の扉は材料の持つ柔らかな木目と色のコントラストをデザインの一部ととらえ、最大限に生かすことを心がけています。
パネルや框はシャクリ出し加工やR面加工を行わずフラットに仕上げます。余計な装飾加工を省くこともコストダウンに繋がっています。
(別紙「ドアデザイン」参照)

木の表情を生かす

一本一本の木が持つ表情を活かし、お部屋の雰囲気に合わせたドアをお客様の手でコーディネートしてください。 時間が経過するにつれ序々に材料の色としっくりとなじみ、風合いが出てくる様子を眺めるのもまた良さのひとつです。

施工時の加工や打ち身による塗装はげを防ぐ為、通常弊社からは無塗装で出荷させて頂いております。施工後お好みの塗料でご自身にて塗装して頂くかたちとなります。
一般的な無垢ドアには揮発性塗料が使用されていますが、これには排気等の大掛かりな設備が必要でコストアップの原因にもなります。無塗装にて出荷することもコストダウンに繋がっています。

弊社では下記の㈱プラネットジャパン様の『プラネットカラーシリーズ』をお勧めしています。食器にも使える自然塗料でベタツキが少ないため汚れにくくお客様に好評です。大型ホームセンターにて取り扱っていますのでお好きな色をお選び頂けると思います。(自然塗料は簡単に塗り重ねることができますので、メンテナンスも容易です。)

プラネットカラーシリーズとは

プラネットカラーシリーズはドイツクライデツァイト社と(株)プラネットジャパンが共同開発した100%植物油を使用した安全な天然木材用保護塗料です。
木の特徴を最大限引き出します。人と環境にやさしく、木の質感を損なわない自然塗料です。

  • 溶剤はほとんど含まれていません。
  • シンナーなどの揮発性成分は全く含みません。
  • 環境、人、動物に安全です。
  • 子供の玩具はもちろん木の食器にも塗装が可能です。

膨張・収縮による力を逃がすドア・建具の特殊構造

無垢材を使った扉で最も多いクレームが扉の膨張・収縮による開閉の不具合です。
従来、無垢材を使った框組扉はホゾ組みと呼ばれる方法で製造されて来ました。ホゾ組みは一般的に強度が増すとされているからです。ところが板目材を使用し框組扉を製造すると、年輪が少ないため強度がなくホゾが割れる、組み立ての際にねじれが発生するなどの問題が生じます。そのため、弊社では板目材を框として活用するするためにダボによる製造方法を採用しています。

膨張・収縮による開閉の不具合を抑えるために、パネル板を木表、木裏に交互に組み、さらに一枚一枚を独立させて固定することにより、材料それぞれの変形が扉全体の膨張・収縮に影響を及ぼさないよう下記のような構造を採用しています。


扉内部構造(扉右上部のみ)
杉無垢ドアED-2図面.pdf へのリンク



結合部のダボの配列

板目材の反り・ねじれ対策

板目材を反り・ねじれの少ない材料に

弊社の扉は框、桟、パネルに本来扱いの難しいとされる板目材を使用しています。手間と時間をかけた材料管理と、木が一本一本持っている癖を応用する独自の製造方法により、板目材を反り・ねじれの少ない材料に生まれ変わらせます。

板目とは
年輪の目に沿うように接線方向に切り出した板の表面に現れる木目を板目と呼びます。板目の板には裏表があり、切り出しの際に外辺部側に面していた方が木表、中心部側に面いていた方が木裏となります。板目の材は収縮・変形し易い傾向があり、また木裏に比べ樹齢の若い木表は水分移動が早いため収縮が大きく 縮み易く、割れ易くなります

ウィキペディアより引用

反り・ねじれを低減させるための材料管理

このように扱いが難しいとされる板目材を反り・ねじれの少ない材料として生まれ変わらせるために、次のような方法を採っています。通常木材は山から切り出した後に製材し、機械による人工乾燥を行い市場で販売されます。

  1. 製材
  2. 人工乾燥(含水率15~20% 7~10mm程度の反りが発生する)
  3. 私設市場にて材料購入
  4. 1年間、屋外で雨を避けて桟積み乾燥(反りが発生)
  5. プレーナー(自動手押しカンナ)にかける(反りを削ってまっすぐにする)
  6. 節の多い材料は、節が目立たないように中央で割り、両面が木表になるように接合する。(下記「反り・ねじれを低減させるための加工方法」参照)
  7. ひと夏屋内の資材置き場にて乾燥(昼:屋内温度約70℃←→夜:屋内温度約30℃を3ヶ月間繰り返す)
  8. プレーナー(自動手押しカンナ)にかける(反りを削ってまっすぐにする)
  9. さらに屋内にて乾燥(1~2ヶ月 0~1mmの反りが発生する)
  10. 勝手をつける(材料一本一本の性質を見極め適材適所に振り分ける)
  11. 反りにくい板目材になる(扉を作る材料となる)

反り・ねじれを低減させるための加工方法

木には目のばらつきや節の入り方など、一本一本に癖があります。その癖を見極め、材料によって加工方法や使用する箇所を決定します。そうすることで材料の無駄なく利用することができます。

また、こうした加工によりどれだけ反り・ねじれが低減されたかを確認するため、我社では実際の室内よりも厳しい環境を人工的に再現し、材料や構造の化学的検証を進めています。
環境試験による検証.pdf へのリンク

  • 例)節が少なく、目の通った材料では、無垢材のまま、廊下側が木裏になるように製造する。

    [ 框材を上から見た図 ]
  • 例)節の多い材料では、真ん中で割り、反りの程度を確認しながら、張り合わせる。

    [ 框材を上から見た図 ]