木づかいのコツ 外まわりの建具のコツ2 – 『月刊住宅ジャーナル』2021年10月号掲載

守谷インテリア木工所が月刊住宅ジャーナル(株式会社エルエルアイ出版) 2021年10月号で紹介されました。以下に転載します。
全文はこちら( monthlyhousingjournal_2110d2.pdf )。

連載 直伝 木づかいのコツ 外まわりの建具のコツ2

補遺篇(其ノ参)
守谷建具(埼玉県)代表 守谷和夫

[ 月間住宅ジャーナル ]
前回(7月号)は、寺院向けに出荷する無垢建具をもとに、外回りの建具のコツについて構造面から教えてもらいました。塗装のコツについても教えてください。

紫外線カットと墨

[ 守谷 ]
最近では、木材にはガラスを謡った無機系の塗料が良いという話を聞くが、何かの誤解ではないかと思う。塗料の組成を詳しく見ないと分からないが、単純にガラスであれば、木材は収縮してもガラスは収縮しないので、表面に目に見えない割れが出て水分が入ってくる。ウレタンだと木材に追従して収縮するので、有機系の塗料でなければ木材の塗装には適さない。
守谷建具では、紫外線をカットする自然系のウレタン塗料を使っている。防腐剤としてタンニン(柿渋の一種)を混ぜていて、その上に紫外線吸収剤の透明なウレタンを塗る。
お寺の古い門札を見たことがあるかな。木が傷んでいるのに、墨で書いたところだけが、新しくて傷んでないから不思議だろう。

[ 月間住宅ジャーナル ]
そういわれてみれば、墨が塗ってあるところは傷んでいません。不思議ですね。

[ 守谷 ]
あれは、黒い墨の成分が紫外線をカットしている。からだ。墨の部分は浮いて、周りは劣化する。化粧品でも同じ効果が出るが、表層の墨で紫外線をカットして下の木材に紫外線が届かないようにしているんだ。
ただし、黒だと赤外線を吸収するので温度が上昇するから、夏になると割れるかもしれない。だから、温度の上昇しない透明な紫外線カットの塗料を使っている。
木材は、風が吹かないと割れないんだが、30~40度の温風でも風が吹くと急激に乾くので割れやすくなる。服は無風だと乾かないが、風が吹くと衣類がすぐに乾くのと同じことだ。

面の取り方に注意

[ 守谷 ]
木製建具、特に木製サッシは、未塗(みそう)で現場に納品することがほとんどだ。この習慣を変えなければ、塗料の塗り方を学んでも役に立たない。現場では、わざわざ丁番(ちょうばん)まではずして塗る職人なんかいないし、一番弱い胴付(どうつき)の木口(こぐち)の塗装までできないから劣化が早くなる。まずは、材料費を少しでも減らしたい元請けを説得して、未装じゃ駄目なんだということを納得してもらって変更させないとだめだ。
特に外部建具、サッシは組立て前に木口に塗装することだ。注意すべきことは、木口の面の取り方だ。まず、胴付きにほぞやダボを差し込む前に、守谷建具では、鉋で45度の面をとってから木口を塗装する。こうすると塗料がしみこみやすくなる。
なぜ、45度の面をとるかというと、木材の水を吸い込む道管(どうかん)は、気圧の変化で浸透圧が異なってくるからだ。
先ほど服が乾くのには風が必要だという話をしたが、木材の木口面が塗料を吸い込むのには、直線の断面にすると、同じ気圧になるから吸い込みにくくなる。斜め45度の面をとると道管の面積が大きくなり、気圧が異なって塗料を吸い込みやすくなる。
室内用の無垢建具では、ここまで塗装はしないが、外まわりの建具では、木口面を樹脂化しないと、水分を吸い込んでしまうから木が傷みやすくなる、こうやって組み立て時にあらかじめ継ぎ目を塗装していけば、雨が降っても大丈夫だというわけだ。
やりにくい箇所としては、ダボ(ほぞ)の箇所がある。ダボの箇所は受ける前にやると接着しにくくなる。だから、塗装した後にダボを掘って接合させるんだ。それと、下枠(したわく)に水抜き用の穴をあけるのをわすれないことだ。また、門戸などは、ミゾの中に5mmぐらいの銅パイプを入れると、通気と銅の緑青(ろくしょう)で防腐効果が出る。

月刊住宅ジャーナル(株式会社エルエルアイ出版)2021年10月号より転載