新技術・製品紹介 軽くて強い!鉄筋を使わないプレキャストコンクリート板を開発 守谷和夫氏(守谷建具店社長)が発明し、特許取得 – 『ウッドミック』2020年08月号掲載

守谷インテリア木工所がウッドミック(株式会社ウッドミック) 2020年08月号で紹介されました。以下に転載します。
全文はこちら( woodmic_2020-08_d1.pdf )。

新技術・製品紹介 軽くて強い!鉄筋を使わないプレキャストコンクリート板を開発 守谷和夫氏(守谷建具店社長)が発明し、特許取得

一般的なプレキャストコンクリート板は、床材や壁材としてひび割れの防止、強度を確保する為に、内部に格子状に組んだ鉄筋(ワイヤーメッシュ)を挿入して製造されている。その為、プレキャスト板の重量が非常に重いものとなり、取り扱いに際しては重機を必要とする等、扱いづらい資材の一つである。
この程、建具製造を本業とする守谷和夫氏((有)守谷建具店)は、鉄筋を使用せずに代わりに合板、ケイ酸カルシウム板、大平版、フレキシブルボード及び合板・木材・ケイカル板を組み合わせ積層構造にした中間板材をコンクリート板で挟み込んで製造したプレキャストコンクリート板を開発・発明し、特許第6648965号として登録された。(図参照)
守谷氏が発明したプレキャストコンクリート板は、カーテンウォールとしての用途にも使用できる軽量の壁材資材としての用途もあり、図のように木材片を利用する以外にも様々な植物系繊維を鉄筋の代わりに使用して製造でき、一方、コンクリートにカーボン等を混ぜ込んで製造すれば、電磁波等の透過を防止できる壁などにいろいろと応用できる。

木づかいのコツ 木材と湿気との関係 – 『月刊住宅ジャーナル』2020年09月号掲載

守谷インテリア木工所が月刊住宅ジャーナル(株式会社エルエルアイ出版) 2020年09月号で紹介されました。以下に転載します。
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連載 直伝 木づかいのコツ 木材と湿気との関係

第17回(全20回予定)
守谷建具(埼玉県)代表 守谷和夫

[ 月間住宅ジャーナル ]
6月、7月と雨続きの日が二カ月以上続いています。観測史上、最長の梅雨となっていますが、木製建具への影響は出ていますか。

記録的な梅雨によって倉庫の木材にカビ発生

[ 守谷 ]
長雨が続くと、板は反る、建具はかたくなる(閉まりにくくなる)。トラブルが次々と起きてくる。今年は工場の二階で保管している乾燥材にまでカビが生えてしまった。カビといっても表面のホコリをとれば一緒にとれてしまう位のレベルだが、こんなことが起きたのは50年以上やっていてはじめてだ。
一カ月も湿度が80%~90%という日が続いていると、木材が湿気を吸い取ってしまう。木材は雨の水は吸わないが、空気中の湿気を吸う。木材の含水率というのは、自然乾燥で2~3%ほどで、無垢建具として使う場合は、それをさらに夏の二階の温度60℃から70℃(昼間)、夜で30℃ぐらいの工場で2年は養生する。空気中の湿気が多いと木材が湿気をすって伸びてくる。同業者の仲間内の話によると、シート張りのユニットドアがしまらなくなったり、事務所の壁のプリント合板の表面がはがれてしまったそうだ。合板は20年以上前のものだが、長雨で乾いたり縮んだりを繰り返しているうちに接着剤面に疲労が起きて合板表面の収縮に耐えられなくなってしまったのだろう。

室内建具でも異変目安を超える膨張率

[ 月間住宅ジャーナル ]
建具の納まりでは湿気による木材の膨張をどのくらいに見ておけばいいのでしょうか。

[ 守谷 ]
木材というのは、長さ方向は伸びにくいが、幅方向が伸びてくる。おおよその目安としては、梅雨の季節に100mmで1mmのびる。1mだと10mmのびる。大体、(1/100)から(1.5/100)ほどで見ておいてから、建具をつくるんだ。
ところがこうした目安も今回の長雨では違ってきたんだ。
今月加工していたパネルは、3尺(909mm)で3分(9mm)足りなくなってしまった。定規は25mm厚のランバーコア、幅750mmで0.6mmから0.7mm伸びてしまった。実際には10mm以上も伸びたということだ。
ダボで接合する場合は、もっと伸びることもある。含水率2%から3%の杉の板目で、厚みが30mmある板を使って框を組んだら、2mのドアで5cmも伸びてしまったこともある。
無垢材を使った建具については、梅雨の季節だと何ミリ伸びるかという、長年の経験値とか一般的な理論値だけじゃ駄目だ。異常気象で今まで起きたことがないことが起きているもんだから、勘や常識だけではあてにならない。加工していて、あれ、何かおかしいなと思ったら、すぐに理論に置き換えて経験値に取り込むようにしないと、この異常気象の世の中の動きにはとても対応できない。

木造建築物への影響は?

[ 守谷 ]
人が通る大きさのドアでもこんな状況だから、もっと大きなモノ、例えば木造建築だと一体どうなるのかと気になっているんだ。これが中大規模の木造建築だとどうなるのか。例えば、最近注目を集めているCLT建築ではどうなっているのか。見た限りでは木材同士をぴったり固定していて、関係ないように見えるが、長雨の季節に木材同士が膨張して、木材の接着面に負担がかかって変形がおきるだろうし、あるいは集成材の接着面にも負担がかかって接着剤面の疲労が起きるだろう。木目方向に張っている集成材だと長さ方向は伸びずに幅方向だけが伸びるが、木目を交互に直交させて張っているCLTだと、湿気で縦と横の両方向が伸びるから、接着剤面にかなり負担をかけているはずだ。こうしたことは、一体誰が管理しているものなのだろうか?

[ 月間住宅ジャーナル ]
建築物の検査では、地震で建物が倒れないですとか、火災で燃えひろがらないですとか、人命の危険や安全性につながる所はしっかり見ているはずです。しかし、木造の建物が湿気で膨らむ箇所までは検査では見ていません。木造設計の解説書やマニュアルには木材の伸び縮みを暫定値で計算する例もあると思いますが、建築の部位ごとの木材の膨張・収縮に関する専門の解説書やマニュアルはまだ出ていないと思われます。

[ 守谷 ]
木材の膨張・収縮による変形は、設計者ひとりひとりの判断でチェックしているのだろう。設計者の中には、今まで鉄筋コンクリートや鉄骨しかやったことがない人が、はじめて木造でやることもある。その際に、木材の膨張や収縮についてあまりよくわかっていないので、第三者がいないということになる。
実際に数年前の現場では、5月の初旬に巾50mm、厚30mmの杉材を外壁に張り、例年通りの梅雨だったのに、7月に入って杉材の外壁がはね上がり、張り替えたことがある。おそらく板幅が1.5mmぐらいは帯びたと思われる。
これは後々、大きな問題になるんじゃないだろうか。中大規模の木造建築は、今どんどん増えているが、梅雨の季節のドアや襖の開け閉めの規模どころではなく、おそらくこれからは、熱帯地域のような、雨季・乾季、又は50年に一度の異常気象が毎年のように起きるので、後々になって大きなクレームに発展するのではないだろうか?

木づかいのコツ 外回りの木材の塗装 – 『月刊住宅ジャーナル』2020年08月号掲載

守谷インテリア木工所が月刊住宅ジャーナル(株式会社エルエルアイ出版) 2020年08月号で紹介されました。以下に転載します。
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連載 直伝 木づかいのコツ 外回りの木材の塗装

第16回(全20回予定)
守谷建具(埼玉県)代表 守谷和夫

[ 月間住宅ジャーナル ]
第14回(4月号参照)では、守谷宅の外装リフォームを参考に、外まわりで木材を使用する際の注意点について考えました。結論から言えば、濡れやすい箇所には、木を使わない方が良いということでしょうか。

[ 守谷 ]
必ずしもそうではない。杉の赤身のように、ナノレベルで蓋(弁)がされていて、水が浸透しない材を使えばいい。また、それ以外の材でも、塗料を使って木材を樹脂化すれば、耐久性・耐候性は高まる。

[ 月間住宅ジャーナル ]
一定寸法の材から杉の赤身だけを選びだすということは厳密には難しいので、やはり塗料と組み合わせて性能を高める方法になるのでしょうか。

外まわり塗装のコツ

[ 守谷 ]
外まわりで使う場合には、塗装の仕方にコツがいるんだ。これはほとんどの業者が誤解しているんじゃないだろうか。
外まわりで塗装する場合は、木をつるつるにしちゃ駄目なんだ。木の表面をざらざらにしてから塗らないと、木が腐りやすくなる。
サンダーで研磨する時に、100番で研磨するとつるつるになるが、40番で研磨するとざらざらになる。両方に塗装すると、40番の方が、5倍くらい多く塗料を喰うことになるんだが、その方が、持ちが全然違ってくる。
例えていうと、北米の板壁みたいにするといいんだ。鋸引きのざらざらのベイスギ(杉科の木〔シダー〕)の板壁にペンキや自然オイルで塗装するだろ。ああいう風に塗ると木材にたくさん塗料がしみこむから木が長持ちするんだよ。
研究では、アメリカやヨーロッパは寒冷地や乾燥地だから、高温多湿の日本よりも木材が腐りにくく長持ちすると言われている。しかし、研究者は現場のことをあまり知らないのではないのだろうか。そもそも塗装する木材の表面が違うと、塗料の量が違って経年変化にも大きく影響してくるはずだ。

[ 月間住宅ジャーナル ]
一般的には塗装前にやすりで磨いて、目止め剤も塗ってから塗装するのが良いと言われていますから、のこ目が付いたままの板に塗るという欧米のやり方は全く異なります。しかし、塗料を何倍も増やして塗ることには抵抗感があるのではないでしょうか。

[ 守谷 ]
いや、日本では3~4回重ね塗りするので、塗料の量としては大きな差はない。だが、重ね塗りでは木材に密着しにくいんだ。
外回りに使うのは油性塗料が多いが、油をたくさん使うという発想は、日本の伝統工芸にもあった。和傘に使う油紙がそうだ。和紙は表面がざらざら、でこぼこだから、油を大量に吸い込んで、水をはじくようになる。ただし欠点としては、燃えやすくなる。板葺き(いたぶき)屋根や板張の壁に油を使わなかったのは防火のためだろう。植物油でも空気中で硬化するえごま油や椿油などでないと使用できないだろう。

無機系の可能性は?

[ 月間住宅ジャーナル ]
伝統系では下見板張(したみいたばり)に柿渋(かきしぶ)や煤(すす)をぬって耐久性・耐候性を高めて、退色(木材の変色)にも備えたわけですが、防火については屋根材に瓦を用いて無機質化することに頼っていました。近年では、液体ガラスの塗料も出ているようですが、外まわりの板に無機系の塗料を塗るという発想はどうなのでしょうか。

[ 守谷 ]
液体ガラスというのは、水ガラスのことを指しているのだろうか。原料が不明なので製品に関する言及はできないが、水ガラスというのは、ケイ酸カルシウムのことを指している。つまり無機系の材料だ。
無機系の材料を木材に使う際の注意点は、塗料か木材か、どちらかの性質を変えないと使えないということだ。
無機系のものはいくら粒子を細かくして、ミクロン単位、ナノ単位にしたとしても、粒子同士が結びついて固まってしまうから、木材には浸透しない。
水溶性で木材に浸透させるには、赤身ではなく、白太を使う方が、よく水分を吸うので良いとされている。一般的な不燃木材では、水溶性の不燃材料を杉の白太に吸い込ませる。
分かりやすい実験としては、杉の赤身、杉の白太、檜の赤身を、100℃で30分煮沸して漬けておくと、面白い結果が出る。
杉の赤身は細胞にフタがされている。これを細胞壁孔と呼ぶ。赤身だと水を吸い込まずに水の上に浮いているのだが、杉の白太と檜の赤身は、細胞にフタがなく、水を吸うので沈んでいく。沈むと比重が3くらいになる。
だから、以前(第6回)にも説明したが、檜(ひのき)の赤身は、杉の赤身よりも腐りやすいんだ。だから、檜の赤身を外まわりには使わないほうがいい。
一応誤解のないように補足すると、細胞壁孔とは、木材内部の水を吸い上げる機能を持つ導管の、次のそのまた次の非常に微細なナノレベルの話だ。
また、木材は収縮するので、無機で水溶性の材料、例えばホウ酸を溶かしたものを塗ると、湿気が入り込む。いわゆる白華現象が起きる。こうした木材の性質によって起きる欠点を防ぐため、逆に木材に熱などを加えて変質させ、収縮率を減らしてから塗るという方法もある。しかし、木材が変形するし、製造コストもかかってくるので割高となる。
前回(第15回)でも紹介したが、竹というのは表面がシリカ質で無機系のガラス質のような物質だ。ことわざでも言う通り、「木に竹を接ぐ」(=異質なものをつなぐこと、筋道が通らないこと)のが、なぜ駄目なのかというと、有機系と無機系の材料では性質が違うからなんだ。

樹脂化という選択肢

[ 月間住宅ジャーナル ]
製造コストの観点から言えば、屋外で木材を長持ちさせるための最も合理的な選択肢は、木材の表面を塗装することによって樹脂化する、つまり表層をプラスチック化するという選択肢になるのでしょうか。

[ 守谷 ]
樹脂化することは必ずしも安価な選択肢ではない。例えばアセチル化木材のように、木材をミクロレベルで樹脂化することで、腐朽に対して極めて強い木材にすることもできる。しかし、大変なコストがかかってくる。アセチル化木材というのは、木材の導管にプラスチックを詰め込むWPCの技術よりもさらに高度な技術になるから、簡単に購入することは難しくなる。だから、表面だけを樹脂化する塗装の方が、製造コストとして良いということになる。
実は、アセチル化よりもコストをかけずに、杉の赤身に1ミリくらい簡単に樹脂を浸透させる技術がある。これについては、まだ開発中なので詳細は言えないが、最初に述べたように表面の研磨の仕方を変えたりとか、建具で言えば小口の面の取り方を変えるだけでも大きく違ってくる。これについてはまた次の機会に紹介しよう。


木づかいのコツ 特許で企業と共同開発 – 『月刊住宅ジャーナル』2020年06月号掲載

守谷インテリア木工所が月刊住宅ジャーナル(株式会社エルエルアイ出版) 2020年06月号で紹介されました。以下に転載します。
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新連載 直伝 木づかいのコツ 特許で企業と共同開発

第15回(全20回予定)
守谷建具(埼玉県)代表 守谷和夫

[ 月間住宅ジャーナル ]
新型コロナの影響はどうですか。埼玉県でも感染拡大が広がっているようですね。

[ 守谷 ]
近くの施設で入所者の集団感染が起きてしまった。所沢市や狭山市のあちこちで感染者が出ているから、むやみに外出できない状況だ。

[ 月間住宅ジャーナル ]
では、今月は電話取材でいきましょう。

[ 守谷 ]
今年1月20日に新しい特許がおりたんだ。建築資材のメーカーとの共同申請による特許だ。今月は新しい特許の話をしよう。

[ 月間住宅ジャーナル ]
この特許の目的は一体、何ですか?

[ 守谷 ]
目的は国産材の構造利用だ。これまで使われてこなかった工法でも、この特許を使えば、木材を利用することができるようになる。

[ 月間住宅ジャーナル ]
この特許申請で一番難しかったのは何ですか?

[ 守谷 ]
最初に申請した時に分かったんだが、竹を芯材にしたいわゆる木舞(こまい)土壁というのは昔から作られていることがあって、木材を芯材にしたのでは、一般的過ぎて特許としては申請できないという話があったんだ。特許にするのは、竹を木材と同じ素材と考える「誤解」を否定しなければならなかった。
実は、竹をコンクリートに入れると、長持ちはするんだが、コンクリートと剥離するんだ。剥離する理由は、竹はイネ科なので、表面がシリカ質の成分の被膜になっているせいだ。
シリカというのは、竹の表面のツルツルしているところで、これがあるから、竹の木舞は長持ちするんだが、コンクリートは、竹のシリカ質のせいで、コンクリとと竹の繊維を密着させることができないんだ。
申請の内容では、シリカ質の成分がなくて、コンクリートを密着させて、剥離や爆裂が起きない材料だけを選んでいる。
この辺が、今回の特許の決め手となった箇所だ。

[ 月間住宅ジャーナル ]
ところで、特許についての一般的な疑問をぶつけてみたいのですが、そもそも何のために特許を取得するのですか?建材・設備の分野ですと、コピー・海賊版防止、企業ブランド維持といった意図のものが多いようです。一方で本当に必要なモノについては、他社の特許を侵害しないようにして、別の技術で同じ効果を出すように申請するケースもあります。業界では、そもそも特許は本当に必要なのかという「特許不要論」の意見もあるようです。

[ 守谷 ]
特許を取る理由の一つとして、製品開発よりも特許取得の方が、金がかからないということがある。実際に製品化しようとすると、数千万単位の投資が必要なものもある。だから、開発に投資するよりも先に
特許を取得した方がいいということになる。
自分がこれまで出してきた特許で、すでに実用化しているのは数製品ある。主な機械は、加熱減圧含浸装置(株式会社ヤスジマ製、守谷建具が木材学会で発表)、木材表面木殺(きごろ)しによる含浸装置(飯田工業株式会社製)がある。
一方で、これらの製品に類似した機械としては、木材の振動減圧乾燥装置(Kメーカー)、木材の圧縮もどり過程による含浸装置(Tメーカー)などがある。
そもそも特許の類似製品が世に出ないようでは、技術としては価値がないに等しい。
一方で他社にそっくり真似されないようにするためには、特許申請の原則として、技術を完全に網羅して記載すべきではないということがある。そうしておけば、類似した製品は、木材の物理的な原理と経験の不足により、性能が不十分なものとなるだろう。
特許を取るもう一つの理由は、開発のための仲間づくりだ。「技術指導するから一緒に特許を使った製品の開発をしないか」という意図で出しているものなんだ。もちろん、コピー防止の意図もあるんだけど、むしろ、技術情報として開示して、知財を求めている企業と一緒に開発をしようという意図で出しているんだ。今回取得した特許もそういう狙いだ。特許の「詳細な説明」を見るとよく分かるだろう(P34概要参照)。

[ 月間住宅ジャーナル ]
一読してみたのですが、よく分かりません。木材、合板、ケイカル板、大平板、フレキシブルボードなどを芯材にして、両側をコンクリートで固めたPC板(プレキャストコンクリート板)だということは分かるのですが、浄化槽のコンクリート版、ビルの床材、電磁波対策などさまざまな用途が書かれていて、製品化として何が主眼なのかが分かりません。

[ 守谷 ]
特許の詳細説明では、様々な可能性が列挙されている。このうち、一番重要な用途は1つだけだ。残りの用途はカモフラージュのようなものだ。
特許というのは、申請のための準備も更新のための維持費もかかるから、いくら建具屋の道楽とはいっても、趣味だけで出せるものではない。これは共同開発者の資材メーカーの方で、開発の本当の狙いを強調したくないという意図があって、何のために使うのかという用途をあえてぼかしているんだ。
これについては共同申請者のメーカーの企業秘密にあたるから、自分の方からは教えることはできない。特許の中には、そういう狙いのものもあるんだ。もちろん、浄化槽工事の軽量化には役立つし、炭(カーボン粉)を入れれば電磁波対策にも、一緒に開発しようと誘っているんだ。


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木づかいのコツ 屋外での木材利用に注意 – 『月刊住宅ジャーナル』2020年04月号掲載

守谷インテリア木工所が月刊住宅ジャーナル(株式会社エルエルアイ出版) 2020年04月号で紹介されました。以下に転載します。
全文はこちら( monthlyhousingjournal-2004d1.pdf )。

新連載 直伝 木づかいのコツ 屋外での木材利用に注意

第14回(全20回予定)
守谷建具(埼玉県)代表 守谷和夫

[ 守谷 ]
今月もジャーナルの読者のために、面白いものを紹介するよ。

[ 月間住宅ジャーナル ]
これは、道端などに落ちている木の棒でしょうか。

[ 守谷 ]
違うよ。30年屋外で放置した杉の四寸角の柱だ。うちの畑に転がしとたのを、ブラシで泥を落としたら、こんな風になった。

[ 月間住宅ジャーナル ]
まるで木材のミイラか、白骨死体のようですね。

[ 守谷 ]
30年経っても残っているのは、心材の赤身だけだ。辺材の白太は、腐ったり虫に食われたりして減失し、ついになくなってしまった。

[ 月間住宅ジャーナル ]
木造住宅は、従来型の不動産評価で30年で資産価値がゼロになると言われています。これまでの新築木造住宅の価値は屋外暴露の白太同然だったのかもしれません。

[ 守谷 ]
つまり、木材で本当に価値があるのは杉の赤身だということだ。実は、昨年リフォームした自宅では、屋外にたくさん木材をつかっているんだ。軒板、縁側、玄関ドアなどに使って、塗装の経年変化や木材の腐朽の度合いを調べているんだ。

[ 月間住宅ジャーナル ]
守谷建具の木工所の隣の自宅ですね。玄関、ベランダ、軒先に惜しげもなく銘木が使われています。
読者の皆さんにあらかじめ補足説明しておきますと、これはあくまでも実験的仕様として守谷さんが施主支給したものです。工務店さんの設計ミスでは全くありませんので、ご安心ください。

[ 守谷 ]
予想以上にひどかったのは軒天だ。ヒノキ合板の一類を使ったが、昨年の梅雨で表面にカビが生えてしまった。汚いとカミさんに言われて、自然塗料の塗装を塗り直したが、秋の長雨でまたカビが生えてきた。

[ 月間住宅ジャーナル ]
外装材は木目柄の窯業系サイディング。2階の軒天には一般的なケイカル板を用いています。1階軒天だけ、ヒノキ合板を実験的に用いています。
写真をよくみると、白太のカビがひどいようです。空気中の湿気が桧(ひのき)の白太に付着してしまったのでしょうか。ここでは1類ヒノキ合板を用いていますが、1枚板の場合はどうなのでしょうか。

[ 守谷 ]
1枚板なら少しの白太でも大丈夫だろうと思って、自然塗料を塗って使ったんだ。
ヒノキ合板というのは、最近になって盛んに製造されるようになった合板だ。表面がきれいだからついあらわしで使いたくなる。しかし、合板はロール剥きなので湿気を吸いやすくなってしまっているので、使い方には注意が必要だ。
カビが生えた原因には、昨年の長雨の影響もある。昨年は畑のホウレンソウがひどい不作で、台風の影響で多くが枯れてしまった。同じように軒天のヒノキ合板も記録的な長雨で予想以上に早くカビが生えてしまった。
最近の異常気象では、長年の経験に頼っているだけでは、木材利用の判断が難しくなってきた。これで良いと思っても、予想外のことが起きてくる。むしろ経験は疑ってかかった方がいい。
屋外で木材を使う時の注意点としては、とにかく信用できるのは、杉の赤身だけだということなんだ。白太も、塗料も接着剤も、時間がたてば本当に屋外で使えるのかどうか、あやしくなるんだ。